森崎和江『奈落の神々 炭坑労働精神史』(平凡社ライブラリー)のkindleは、バージョンが古いのかなんなのか、フォントや表示が微妙に他の電子書籍と違う。
こういうものははじめて見たし、この本でしか見たことがない。
実はhontoを使っていない大きな理由の一つが「発行年の古い本はビューアも古い」ことにある。本によって表示や使い方が違うとなんとももやもやする。気が散るのだ。理由はわからない。神経質だと自分でも思う。でも統一感が欲しい。
というわけで『奈落の神々 炭坑労働精神史』は紙で入手したかった。敬愛する森崎和江の本だし……。
とはいえ、出版社のサイトでも絶版表示。他のオフライン・オンライン書店にも在庫はあるわけがない。「悔しい……あと10年早く生まれていれば……」と思う瞬間、それは本が絶版し、新品で入手できない時だ。
無駄な足掻きとわかっていてもひたすら在庫を検索し続ける日々であった。
だがしかし、実はなぜかAmazonには在庫があるのにはそもそも気づいていた。
(これ)
この情報はあえて無視していた。
たとえば、2670円のペーパーバック、とある。
が、『奈落の神々』の定価は出版社サイトによると1495円(本体1359円+税)である。なぜか高いのだ。転売かなにかか?と疑ったりした。
それにしては発売元も出荷元もAmazonである。そして新品のようだ。在庫も少なくない様子。
うーん怪しい……。昨今のAmazonを信じていいのだろうか……。でも紙本があるなら是非欲しい……。なぜ定価より高いのだろうか……。それに他の場所ではどこも絶版なのに……。
と悩みながら、ひたすらネットで調べていたところ、Amazonペーパーバックについての情報ブログ記事があった。
どうやらAmazon社が書籍を紙として印刷してペーパーバックとして販売しているらしい。たしか岩波オンデマンドブックスも似たような方式だった気がする。
ダメ元で、また怖いもの見たさで実際に頼んでみた。
下の『近代の呪い』は絶版でない平凡社ライブラリーの書籍だ。新品で入手した正規のもの。文庫本+カバーつき。
上にある『奈落の神々 炭坑労働精神史』が今回Amazonで注文した「オンデマンド」版となる。まさにペーパーバックである。カバーもない。
開いたところ、内容についてはおかしいところもなく、印刷も綺麗だった。
フルカラー印刷となるとまた変わってくるのだろうが、モノクロの文章主体の本なら違和感はない。
絶版本が多い昨今、興味深く、悪くない制度だと感じた。導入している出版社がいくつかあるのだろうか?
もう少し情報を発信してもらえると利用する客も増えるだろうし安心感もあるだろうと感じた。逆にこれを全く知らずにペーパーバックを注文した人は「偽物」だと感じるかもしれないので……。